私の父は少し変わり者で、早期退職後は自宅で本ばかり読んでいる人でした。仕事をしていた頃は、職場の方が家に来たり、一緒に飲みに行ったりしていましたが、ここ数年はそういうこともなかったようです。孤独を楽しんでいたというか、一人で大豆から味噌を仕込んだり、梅酒を漬けたりして楽しんでいました。

そんな父が脳卒中で倒れ、看病の甲斐なく1か月もしないうちに亡くなりました。入院中は数日間だけ意識が戻りましたが、ほとんど話すことはできず、何も聞くことのできないまま旅立ってしまいました。私たち兄弟は色々話し合い、寝屋川の葬儀社に相談しようとも思いましたが、父の人柄を考えて、小さなお葬式にしようと決めました。

母の葬儀の時にお願いしたお坊さんに連絡してみると、こちらの意向を快く引き受けてくださいました。本当に親しかった数人の友人と、亡くなるまで付き合いのあった父の教え子数人にだけ連絡をして、自宅のリビングを開放しておくことにしたのです。父を好きだった方々は、かわるがわるやってきては手料理やお酒を持参してくださいました。来てくださった方には、父の作った保存食をおすそ分けしたり、父の書斎からお好きな本を持って帰っていただいたりして、懐かしいお話に花が咲きました。

外から見たら、この家で葬儀が行われているとは誰も気がつかなかったかもしれません。でも、父が最後に会いたかった方は、みんな来てくれたと思います。和やかな笑いのある、あの父らしい葬儀でした。